タイトル『あなたと一緒に最期まで』
私は 何のために生まれてきたのだろう・・・
私は なぜ生きているのだろう・・・
「ねぇ、・・・殺して・・・?」
音の無い部屋の真ん中で、は静かに言い放った。
言葉を交わす相手は一人だけ。
この世で一番大切な人。
エドワードは読みかけの本を閉じて言った。
「何で、オレが殺さなきゃなんだよ。」
「貴方じゃなくちゃ、ダメなのよ。」
一番 愛している人だから
一番 愛してくれている人だから
最期は 幸せを感じていたいじゃない・・・
零れるように吐き棄てた言葉を、拾い集めるように繰り返す。
「疲れちゃったの。ちゃんと、向こうで待ってるから・・・ね、だから殺して・・・?」
甘えるように近寄った。
いつもならば、甘く深いキスをする。
しかし 今だけ、今日だけは、の首に手が伸びた。
片腕の機械鎧がキシリと鳴った。
ゆっくり ゆっくり絞めていく。
表情一つ変えず、エドは淡々と力を込めた。
それが、最期の別れではないかのように・・・
視界が徐々に、白くなる。
愛しい人の顔が 幾重にも重なった。
想い出が、走馬灯のように甦る。
『 お前ってさ、不思議なやつだよな。このオレが、お前となら一緒にいて落ち着けるんだぜ? 』
『 ほら、やる・・・。お前に似合うと思ってさ・・・い、いらねぇなら捨てちまえよ!? 』
『 来年も、再来年も、ずっと一緒にいられたらいいな!オレは、死ぬまででも構わないぜ・・・? 』
懐かしい・・・
消えゆく意識の中で、送られた言葉たちが光を帯びる。
朦朧とする記憶でも、あの言葉は忘れない。
『 簡単に死ぬなよ・・・?オレを一人にしないでくれ、頼むから。 』
「前にも、こんな事あったっけ・・・」
ぼそりと呟き、微笑んだ。
また迷惑をかけて、すまないと思う。
しかし、これで終わるのだから・・・
は静かに瞳を閉じた。
力が入り難くなっている体に、素直に従う。
「何考えてんだよ、お前!」
エドは目を見開き、を突き放した。
咳き込むに、割れんばかりの大声で叫ぶ。
「本気で・・・本気で死のうなんて思うなよ!!」
呼吸と意識がはっきりして来たところで、はエドに目をやった。
「お前の心臓は動いてるんだ・・・! 自ら命を絶つなんて、オレが絶対許さねぇ!!」
その
金色の瞳には、涙の筋が幾つもあった。
「頼むから・・・独りにしないでくれよ・・・お前無しで、オレはどうやって生きたらいい・・・」
ドサリとその場に座り込む。
その様子を、見つめる事しか出来ない。
そして ようやく気付く、
この人の想いの強さに・・・
「・・・ゴメ・・なさい・・・」
は近寄り、涙を帯びて謝った。
言葉にならない想いほど、相手が感じることは困難で・・・
どんなに大切に想ってくれているか
どんなに自分を愛してくれているか
涙で視界が見にくいけれど、は必死にエドに抱きついた。
トクン、トクン
静かに鼓動をするそれは、確かに二つ聞こえている。
『 生きてる・・・ 』
そのことを、改めて実感した。
「
我武者羅に生きるのも、いいんじゃねぇの? ゆっくり生きても、問題ねぇよ・・・」
心臓の音に聞き入っていると、心地いい声が反響した。
はゆっくり顔を上げる。
目の前には、苦笑している愛しい姿。
「ゴメンな・・・苦しかったろ?」
少し赤いその痕を、なぞるように唇が伝う。
くすぐったそうに、は笑った。
「大丈夫。私こそゴメンなさい・・・あなたを苦しめてばかりだわ・・・」
その切なそうな声に、エドは「違う。」と首を横に振った。
「苦しめられた覚えなんて無い。オレはお前が好きだから・・・この先どんな事があっても、お前だけは死なせはしない・・・」
決意に満ちた表情だった。
その表情に、は微笑む。
「私もあなたが大好きよ・・・もう、殺してなんて言わないから。」
エドは満足したように頷いた。
そして、いつもように 甘く深いキスを交わす。
この先 二度と の口から、「死」という言葉は零れなかった。
私は 何のために生まれてきたのだろう・・・
私は なぜ生きているのだろう・・・
答えはそう、簡単なこと
― 愛するあなたに出会うため ―
― 愛するあなたと最期まで ―
あとがき
長らくお待たせ致しました・・・(>_<)
「 シリアスで、最後は甘甘 」というリクを頂いたのですが・・・
これは、果たしてシリアスで甘甘なのでしょうか(滝汗)
ある方のDVDが発売する、という新聞の広告を見て思いついたお話です。
素晴らしい方のなのに、なぜこういう発想になるのでしょうかね(^^ゞ
でも、リク下さいまして有難う御座いました♪
こういうお話を書くのも楽しかったです(^^)
そして、読んで下さった皆様有難う御座いました!
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