タイトル『あなたに誓うは永遠の忠誠 第10話』
















オレたちさ、母さんとの思い出が一番強いんだ



親父は 行き先も告げず消えたきり、帰ってこねぇし



優しく笑うし、時には怒るんだ



オレとアルがケンカしても、さりげなく仲直りさせてくれるしさ・・・





エドは、と視線を合わせなかった。



うっすらと現れては消える、儚い母親との思い出に浸っているようにも見えた。



そんなエドを横にして、は一息ついたエドの問いかけた。



「今・・・お母さんは・・・?」



の何気ない一言が、エドの胸を貫く。



我に返り、エドはを見つめて苦笑した。



「死んだんだ・・・病気でな。」



まさか、こんな答えが返ってくるとは・・・は慌てて言葉を濁す。



「ご、ごめんなさい!私・・・」



慌てふためきながらも、自分とエドは同じ境遇にある事を は始めて知る事になった。



自分の母親も病気で死んだ。苦しみを、一切自分に話さずに・・・



エドの母親の事だ、周りに漏らすこと無く苦しみに耐えていたのだろう。



そう思うと、自然にの頬には透明の雫が伝った。



「だ・から・・甦らせるな、なんて言ったの・・・?」



の言葉に、エドはまたも苦笑する。



「あぁ・・・代価は足りないんだ。どんな事をしても、それに代わるものは存在しない。」



エドは自分の右手を見て、遠い目で呟く。



「オレはこれだけで済んだ。でも、あいつは・・・アルは全てもっていかれた。」



はただ、ただ涙が止まらなかった。



いかに自分が無知だったか、いかにエドの事を考えていなかったか・・・ようやく、少しだけ理解できたような気がした。



「ゴメンね・・辛いのに、話させて・・・私なんかよりも、ずっと苦しいのに・・ありがとう。」



嗚咽を交えながら、は必死で言葉を探す。



しかし、口から零れる言葉は、どれも今のエドに適さないような気がした。



そんなを、エドは愛おしそうに眺める。



黙ったままのエドに気づき、はふと顔を上げた。



「優しいんだな、お前。でも、オレは後悔なんかして無い。今は目的を果たすまでだ。」



目の前には、優しく微笑むエドの姿があった。



「・・・目的・・・?」



「あぁ、元の身体に戻ることだ。アルだけでも、絶対に戻す・・・」




逸らせない瞳、一途な視線




ずっと、この人は不思議だと思った



自分を惹きこむ、何かがあった



それは、一途に想う大切なものの「存在」だったのかもしれない



「応援、してるね。」



は笑顔で言葉を返す。出来るだけ、頼ってはならないと感じたから。



しかし、この頑張りもエドには通じない。



「無理すんなよ、涙目だぜ・・・?」



ふわりとを抱きしめる。



「エ、エド!? 何して・・・」



「頼む、今だけでいいから。オレが・・こうしていたいんだ・・・」



の耳に届いた声は、少し掠れたように聞こえた。



は、黙ってエドの背中に手をまわす。



優しい香りと、暖かな体温が心地いい



『 この人を支えてあげたい 』



月明かりの下 そよぐ風に包まれ、は確かな温もりに身を委ねた。





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