タイトル『あなたに誓うは永遠の忠誠 第9話』
















あの日以来、二人の会話は最小限のものになっていた。



互いに頑固な性格が仇となり、和解することを難しくさせている。



アルは そんな二人を心配しながらも、兄の言葉を信じ ずっと口を挟まなかった。



そんなある日のこと







「今日も冷えるなぁ・・・」



は買い物からの帰り道、沈む太陽と争うように帰りを急いでいた。



季節は変わり、朝方と夕方は冷え込んでくる。



大きな木を通り過ぎようとしたときだった。



クシュンッ



誰かのくしゃみが聞こえ、はその木に近づく。





そこには、木に寄りかかり本を抱えたまま眠るエドの姿があった。



「まったく、こんなところで寝ちゃって・・・」



は自分の着ている上着を掛けようとした。



しかし、喧嘩していることを思い出し葛藤を繰り返す。



『 なに優しくしようとしてるの!? 』



『 私とエドは、今 喧嘩してるじゃない 』



『 本当は顔も見たくないはず 』



「なのに・・・」 



はエドの横に積み上げられた、本の山に目を移した。



そして、その中の一冊を手に取りパラパラとページをめくってみる。



「こんなに難しい本、読んでるんだ。」



は、あれから錬金術に関する本を読み始めていた。



しかし、どれも内容が難しく苦戦を強いられていた。



「今なら、エドの気持ちも分かるかもしれない・・・」



本を元の位置に戻し、はエドに上着を掛ける。



「・・・無理しないで・・・」



そう言い残し、静かにエドの元を離れた。





それから数十分後、エドはうっすらと目を覚ました。



「やべっ!オレ、寝ちまったか?!」



辺りは、とっぷりと日が落ちている。



慌てて読みかけの本を閉じ、持ってきた本に重ねた。



しかし、ふと覚えの無い上着を持っている自分に気づき それを眺める。



「これ、あいつの・・・?」



冷たい風に乗って、ふわりと優しい香りが届く。



香りによって肯定された考えは、自分の情けなさを掻き立てるかたちとなった。



「〜〜〜っ、ちくしょっ!」



バチンッ



エドは両手で自分の頬を叩くと、本を抱えて走り出す。



「オレがこんなんでどうするんだ?! ぜってぇ言うって決めたんだ、オレ達が旅する理由を・・・」











その日の夜、仕事を終えたは 暗くなったホールの窓から外を眺めていた。



今日も、月明かりが眩しく 星の輝きが美しい。



暫く眺めていると、キィ とドアの開く音がした。



音に気付き、視線を向けると・・・



「・・・よう」



片手を挙げて苦笑する、エドの姿があった。



「何か用事?」



鼓動が早くなるのを隠したくて、そっけなく 視線を逸らしながらは言った。



そんな様子のに構うことなく、エドはの傍へと歩みを進める。



「あぁ・・お前に、話したいことがあってさ。」



に近づくエドの姿は、窓から零れる月明かりに照らされ 何か悟ったように美しかった。



「ずっと・・言うって決めてたんだ。オレ達が旅する、その理由を・・・」



傍に着いたエドは その美しい金色の瞳を、まっすぐの瞳に向けた。





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