タイトル『偶然?運命?神の悪戯?・・・私は貴方を信じてる 第10話』
カッ カッ カッ・・・
執務室に続く廊下に、やや早い足音が響く。
「大佐、失礼します!」
珍しく仕事に集中していたロイは、いきなりのことに驚き 目を丸くした。
「君がノックをせずに入ってくるなんて珍しいな。・・・どうした?」
自分の行動に驚いたのだろう、ロイの言葉にリザも少し目を見開いた。
しかし、自分の用件を思い出すと抱えていた資料を差し出す。
「エドワード君に関連するような資料を見つけました。」
リザの言葉に、ロイは立ち上がった。
「エドワード君が行方不明になって、ほぼ2ヶ月が経ちます。同じ頃、身元不明の少年が保護されたそうです。」
提示された資料に目を通しながら、ロイはリザの説明に耳を傾ける。
「人種は異なりますが、年齢や背格好がほぼ一致。瞳や髪の色は、大佐と同じく漆黒だと。」
ロイの頭に、一瞬ある言葉がよぎった。
「・・・『 等価交換 』・・・か?しかし、何のために・・」
「分かりません。もしかしたら、ただの偶然なのかもしれません。」
リザの言葉の後、数秒の沈黙が走る。
沈黙を破るかのように、ロイは顔を上げてリザを見た。
「その少年に事情を聞こう。どこに保護されているかわかるかね?」
この問いを待っていたとばかりに、リザは素早く返答をする。
「はっ!軍の保護下に入っております。大佐の都合次第、いつ訪ねてもいいよう許可を取らせて頂きました。」
「では・・・」
「今は仕事をなさって下さい。」
次の言葉を読み取るように、リザはロイの言葉を遮った。
「うっ、何故分かった・・・」
「何年大佐に付いていると思ってるんですか?これから入って来るものもありますので、終わらせて下さいね。」
がっくりと頭を垂れるロイの様子に、リザは苦笑気味に言葉を返す。
「では、明日・・・」
「了解致しました。」
「お待ちしておりました。こちらへ・・・」
出迎えの憲兵は ロイとリザ、軍の宿舎から駆けつけたアルに敬礼をし 言った。
3人は、一つの部屋の前に案内された。
「こちらです。」
憲兵が扉を開けると、少年はベッドから起き上がり 空虚な部屋で数人の軍人と話をしていた。
訪問者の姿を見ると 少年の側にいた軍人は道を開け、少年本人はペコリと頭を下げた。
「私はこの少年と話がしたい。すまないが、席を外してくれるかね?」
ロイがこう言うと、軍人たちはロイに敬礼し素早く部屋から出て行く。
4人だけになると、今まで見え隠れしていた少年の顔がよく見える。
しっかり少年の顔を確認すると、3人は驚き顔を見合わせた。
髪の長さや色が違うだけで、あとはエドとそっくりだ・・・
「いきなりゴメンなさいね。あなたと話がしたくて・・・いいかしら?」
一番に冷静を取り戻したリザが、少年に優しく声を掛ける。
「はい、どうぞ。」
少年はにっこりと微笑み、了承の言葉をリザに返した。
そして、ロイを見る。
ロイはゴクリと息を呑み、詰まりながらもこう言った。
「君は・・・どこから来たのだね?」
NEXT→
Created by DreamEditor