タイトル『偶然?運命?神の悪戯?・・・私は貴方を信じてる 第11話』
少年は、驚いた顔でロイを見つめた。
「・・・知ってるんですか?僕が、この世界の人間じゃないって。」
その言葉に、リザが答える。
「あなたと同じ境遇にあってしまった子を探しているの。」
僕の兄さんなんだ と言いかけたアルだが、これ以上驚かせまいと口を
噤む。
リザの優しい微笑みに、少年は心を開いたようだった。
「僕は、この世界の人間じゃないんです。」
少年は、ぽつぽつと語りだした。
「たまたま通った道で穴を見つけて、覗きこんだら落ちてしまって・・・気が付いたらこの世界に。」
少年の言葉に、アルは驚きを隠せなかった。
「兄さんと同じだ・・・」
思わず、ぼそりと呟く。
その言葉に、少年は少し驚き しかし 困ったように笑って見せた。
『 ・・・あなたも大変ですね。 』
微笑む顔は、まるで自分の兄のよう・・・
今まで黙っていたロイが、顔を上げた。
「今 立てたばかりの、仮説だが・・・」
ロイは自分の考えを語りだす。
「たまたま時空が乱れてしまい、
歪みが穴となって現れた。そこに、たまたま通りかかった君と鋼のが共鳴しあった・・・」
何故 世界が入れ替わってしまったかは、分からないがね。 ロイはこう付け足して言葉を切った。
「『 鋼の 』?」
少年は、不思議そうな顔をした。
小首を傾げ、答えを探す。
「あ、僕の兄さんの事です。こっちの世界で国家錬金術師というのをやっていて・・・ほら、この左側の人。」
アルは写真を取り出した。
宿を出てくる際、持って来たのだろう。
比較的 新しい写真を、アルは少年に手渡した。
写真を受け取った少年は、驚きの声を上げる。
「この人・・・あの時の!」
「『 あの時 』の!!??」
三人は一斉に声を揃えた。
その様子に、少年は驚きながらも こう言った。
「はい。穴に落ちた時、この人とすれ違った気がするんです。・・・確か、こんな感じの人でした。」
アルは ヘタヘタとその場に座り込む。
「よかった・・・あなたがこうして生きてるのだから、兄さんもきっと生きてる。」
『 大丈夫よ、エドワード君だもの。 』リザはそう諭し、アルの肩に手を置いた。
しかし、少年から不安そうな声が上がる。
「あの・・・僕は、ずっとこの世界にいるんでしょうか・・・?」
その言葉に、アルから離れたリザは、少年のベッドに腰をかけた。
「大丈夫よ、きっと帰れるわ。エドワード君と、再び共鳴し合う事が出来れば・・・」
微笑むリザに、少年の頬は少しだけ赤くなる。
優しい微笑みは、母親を思い出させた。
「もしかしたら・・・」
再びロイの口が開く。
三人は、黙ってロイの方を向いた。
「言い伝えを聞いた事がある、『 約半年に一度の割合で、空がおかしくなる地域がある 』と。
その日を過ぎると、時として未確認の物体が落下しているらしい。」
ロイの言葉に、リザは目を丸くした。
「では、今回の”未確認の物体”というのは・・・『 人間 』・・・?」
「そう理解すれば、全てが繋がる。あと少しで その機会だ・・・急ごう、これを逃すと一年後になってしまう!」
ロイは声を挙げ指揮を取る。
「アルフォンス君、君には詳しいことが分かり次第伝えよう。」
「中尉、すぐに場所の特定を!」
『 はっ! 』
リザは駆けるように、部屋を後にした。
アルはロイに頭を下げる。
ぽかんとしている少年を見つめ、ロイは言った。
「有り難う。君のおかげで、一気に解決しそうだよ。元の世界に戻れる日も近いだろう・・・」
ロイの言葉に、少年は嬉しそうに笑った。
「いえ。こちらこそ、有り難う御座います。」
少年は、照れくさそうに敬礼をして見せた。
憧れていたように、誇りを持って
「うむ。」
ロイも敬礼をして返す。
その
稀なる共鳴 と
直向な意思に、最高の敬意を込めて
兄さん、そっちの世界はどうですか?
無事に 過ごしてますか?
手がかりは 見つかりそうですか?
こっちは、手がかりを見つかりました
・・・早く、会えることを願っています・・・
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