タイトル『左手に、あなたからの贈り物 中編』
















「じゃあ、待ってますので・・・!」



「こ、困ります・・・あの!!」



男は、の制止の声に耳も貸さずに 店を出て行った。



「どうしよう・・・」



は、困り果てて立ち尽くす。



エドが来てくれるようになり めっきり減ったものの、は月に2,3度は男性からの誘いを受けていた。



今回も、これに入る。



クラシックコンサートのチケットの入った封筒を手渡され、断り難い状況・・・



結局、先ほど根気負けをして受け取ってしまった。



「へぇ・・・モテてるじゃん、。」



「エ、エドッ!? いつからそこに・・・」



男性が出て行った扉には、いつの間にかエドが もたれ掛かっていた。



「あいつが出て行ってすぐだよ。尤も、封筒ばっかり見てたお前は 気付かなかったみてぇだけどな。」



エドの言葉は、チクチクとした棘を持っていた。はっきりしないに腹を立てているのだろうか・・・。



「し、しょうがないじゃない・・・いつまで経っても慣れないものなのよ。」



ふーん と、エドは どこか遠くを見ながら返事を返した。



「んで、行くのか?? あいつとデート。」



デートという言葉に、はピクリと反応する。



「デートじゃないのよ? 行く予定だったの人の都合が悪くなったから、代わりに行って欲しいって言われただけ・・・」



「あのなぁ・・・」



エドは、の返事に 半ば呆れて溜め息をついた。



「そーいうのが、『デートのお誘い』って言うんだろ? 都合が悪くなったからって、接点の少ないお前に 何で声が掛かるんだよ。」



あ、そうか という顔で頷く



のエベレスト級の鈍感ぶりに、エドは大きな溜め息と共に 片手で顔を覆った。









「そういえば、エドは女の子を誘ったりしないの? それか、誘われるとか・・・」



暫く沈黙が続いていた店の中で、は思い付いたように口を開いた。



「・・・俺が!?」



店の椅子に腰掛けていたエドは、思わずその椅子から落ちそうになる。




「ほら・・・見て。」



エドは、に促され店の外を見た。



店の前は大通り。一日にたくさんの恋人たちが この店の前を通り過ぎたり、立ち寄ったする。



今も、大通りには数組の恋人たちが幸せそうに寄り添って歩いていた。



「いいわね・・・幸せそう。いつか、私にもあんな日が来るかしら・・・」



は ほうっ と息をつき、窓の外の恋人たちを眺める。



は・・・さ、好きなやつ いないのか?」



は、外へ向けていた視線をエドへ移す。



エドの言葉は 先ほどの棘を無くし、真剣な声になっていた。



「どうしたの? エド・・・この間から、そんな質問ばかり。」



は、クスクスと笑った。



・・・あくまでも、平然を装って



必死の抵抗は 彼に通じるのだろうか。



「何でって・・・お、お前が好きだからに決まってるだろっ!!」



エドは、真っ赤になって自分の気持ちを告げた。



は、自分の手が微かに震えるのが分かった。





エドも、私と同じ気持ち・・・



ここで 『 私も 』 と答えたならば、どんなに救われることだろう



それでも私は・・・





の瞳に、うっすらと涙が浮かぶ。



「・・・・・・?」



エドは 涙に気付いたのか気付いていないのか、返事を気にしてを見つめ続けた。



「ごめんなさい。私、エドの事は『 可愛い弟 』としか見られないわ。」



涙を堪えて、は偽りの言葉をエドに投げた。



エドは そっと瞳を伏せ、



「そうか・・・」



そう返事をした。



「今週末、ここを発つんだ。世話になったな・・・」



に背を向けて、エドはこう告げた。そして、静かに店を出て行った。







「・・・っ」



堪えていたものが、次から次へとの頬を伝う。



エドの最後の表情など、直視出来るはず・・・無かった。



やっとの思いで通じ合った想い。



しかし、それは自分の勝手な考えにより 幸せから悲しみへと結末を変えてしまった。



「嬉し・・かっ、たよ・・・エド。・・・っ、私も・・ずっと・・・ずっと大好きだから・・・!」








ゴメンね、エド



こうするしか、あなたを守れない



私なんかのために あなたの歩みを止める事なんで出来ない 



そんな権利も、資格もない・・・



愛してるからこそ、この結末を選んだの








しかし、何かが違う・・・



「エ・・ド・・、ごめ・・ごめん・・・ねっ」



嗚咽を漏らしながら、は床に座り込んだ。








今頃になって、あなたの存在の大きさがわかった



もう・・・遅いよね



せっかく、正直な気持ちをぶつけてくれたのに



私は逸らす事しか出来なかった



正面から、受け止める事さえも・・・しなかった



お願い、恨んでも構わないの・・・



ただ、この街で 私という人に出会った事を忘れないで欲しい



頭の片隅にでもいい、一瞬でも思い出せる記憶にして欲しい



ほかの女性を愛して、幸せになって欲しい








は、ふと 顔を上げた。



閉まった扉のほかに、見つめた先には何もない。



「何を考えているのかしら・・・」



は自分の想いに苦笑した。



彼のコートのよう 鮮やかな夕日が、薄暗い店内を包み込む。





違うだろ・・・





その光に 彼の言葉を聞いた気がした・・・














後書き。

誤解を解くために、少し言い訳を(^-^ゞ

このお話は、リクエスト通り『 結婚 』がキーワードの甘甘で御座います・・・

ただ、管理人の個人的な趣味上 切ない系が混じっております(汗

個人的で申し訳無いのですが、少しお付き合い下さい<(_ _)>

では、次は甘甘(になる予定)ですので・・・読んで下さって有難う御座います!

ちなみに エドさんのセリフで「尤も〜・・・」というのがあります。

尤も→「もっとも」と読むそうです。




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