タイトル『カタルシス 〜精神の浄化〜 第7話』
















「大佐っ!? 一体、何をされるおつもりですか??!!」


不在だと思っていた上司が目の前にいた。


リザは驚いて声を上げる。


そして、すっかり片付けられた執務机が視界に映る。



















































「・・・すまない。野望とは違う野望が、私の中で目覚めてしまったようでね・・・」




















































ロイは笑ってみせた。


苦笑しながらも、決して変えること無い決意の瞳。


「大切な・・もの・・」


リザが小声で口を開くと、ロイはひとつひとつ言い聞かせるように語りだす。





「君には話していた。極秘の任務を命じられた、と。 その時に出会ってしまったんだ。命をかけて守りたい人に・・・」


「・・・・・」


「その、生け捕りにし無ければならない合成獣が彼女だった・・・。今の私に、そんなことは出来ない。」





「・・・何故、ですか・・・?」





リザはわざとロイに尋ねる、自分の気持ちを封じるために。


その問いに、ロイは少し失笑する。


そして、優しい微笑みを浮かべ口を開く。



















































「初めて、なんだ。本気で一人の女性を愛するのは・・・」



















































凛とした声が執務室内に響いた。


反響するものは何も無く、その音は壁に吸い込まれる。


その声に、リザの瞳からは一筋の雫が伝う。


「君達には申し訳無いが、私は命令にそむく。彼女と暮らしていこうと思う、永遠に。 君には・・・」











ガチャリ











ロイはリザに視線を向けた。


銃を構える彼女の姿に、ロイは「参った。」と言うような顔を見せる。



「まったく・・・とんだ部下だよ、君は。」



真っ直ぐな瞳はるがない。


「私は、私の意志で引き金を引きます。」


その言葉に、ロイは微笑んだ。


「君には、最後まで世話になるな・・・」


リザは、銃口を下ろし答える。


「いえ。好きでしている事ですから・・・」



「・・・すまない、後のことは君にゆだねる。」


有能な部下を持てて、私は幸せな上司だ。こう付け足して、ロイは扉に向かって歩き出す。



















































「・・・っ、大佐!!」



















































もう二度と会うことは無いのだろう、その姿をリザは思わず呼び止めた。


ロイはゆっくりと振り返る。


「・・・どうした?」


夕焼けが、振り返るその顔を 美しく彩った。


いっそう、諦めがつかない程・・・


「・・・どうか・・・」


込み上げそうになる涙を必死で堪え、リザはロイを真っ直ぐ見つめる。



























「どうか、ご無事で・・・!!」



























最後だと言わんばかりに、リザは精一杯の敬礼をしてみせた。


自分は、有能な部下としてしか見られていなかった・・・自分に許される行為は、これだと判断をする。


敬礼をされた本人は苦笑していた。



名残惜しいのは確か・・・


彼女には言い尽くせない程の感謝しかない


彼女在っての、自分であるという気さえした



ロイは静かに右手を差し出す。


彼女への、敬意と感謝を込めて・・・



夕日に照らされた影は、二人を一つにした。




















































握られて重なった右手が、少しずつ離れる。



いつもの帰宅と変わらない、が最後のその後姿を リザはいつまでも見つめ続けた。



























『 私は・・・いつまでも貴方のことだけを・・・ 』


















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