タイトル『遅すぎた出会い 第10話』



















「おばあちゃん、腰の具合はもう大丈夫?」


買い物帰り、偶然出会った雑貨屋のおばあちゃんに は目線を合わせて優しく問いかけた。




「あぁ、すっかり良くなったよ。先生の所で見てもらうと本当にすぐに良くなるって評判だよ」


おばあさんは目を細めて微笑んだ。


そんなおばあさんの姿を見て、 も嬉しそうに微笑む。





「また調子が悪くなったら、いつでもいいから来てね」



のその言葉に、おばあさんはさらに嬉しそうに微笑んだ。





「エドワード先生にもよろしく伝えておいてくれね」



おばあさんはそれだけ言うと、頭を下げてお店の方へと歩いて行った。



はそんなおばあさんの後姿を見届けた後、家への帰り道を歩いて行った。


















「よっと・・・これでどうだ?」



エドはそう言うと、後ろを振り返った。




「おぉ、先生本当にすまんの〜。すっかり元通りじゃ」



エドの後ろから事の成り行きを見守っていたおじいさんは嬉しそうにそう言うと、先ほどまで壊れていた柵を目を細めて見つめた。



「べつにこれくらいいいって。それより、もう歳なんだからあんま無理すんなよ?」



エドは二カッと笑うとそう口を開いた。


おじいさんはそんなエドの言葉に「まだまだ長生きするぞ!」などと笑いながら言い返した。





すると、その時・・・





「あっ!エドったらこんな所に居たの?」



柵の向こうの道から が声をあげた。





「あ〜ちょっと柵直してたんだよ。それよりもう買い物すんだのか?」



エドはそう言いながらも の元へと行き、 の手から荷物を受け取った。


そして荷物の中身に目を落として、数秒黙った後ニッと笑って口を開く。






「今日の夕飯はシチューか?」




エドの嬉しそうな笑顔に、 も笑顔で答える。




「えぇ。向かいのお婆ちゃんから人参を貰ったから・・・それより は?」





は辺りをキョロキョロと見渡しながらエドへと尋ねた。



すると、エドは柵の向こうの木の陰へと目を向けて答える。





「あそこだ。また花でも編んでるんじゃねぇ〜のか?」






エドの目線を追って、 も木の陰へと目を向ける。


するとそこには、エドの言葉通り花を編んでいる の姿があった。


はその様子に優しく微笑むと、口に両手を当てて叫ぶ。



ーーーー。お家に帰るわよ」


の声に、花を編むのに夢中になっていた はパッと顔をあげてこちらを振り返った。


そして笑顔で口を開く。




「ママッ!」




はそう言うと、急いで二人の下へと走った。


そして勢いよく へと抱きつく。





「おかえりなさいっ!これねっ、これママにあげる!! が作ったの。ママにプレゼント」


はそう言うと、持っていた花の冠を に差し出した。


はその冠を笑顔で受け取って口を開く。






「ありがとう、 。上手にできてるわね」


の言葉に、 はさらに嬉しそうな顔をした。




すると、その様子を見ていたおじいさんが柔らかく微笑んで口を開く。





「先生のとこは、本当に仲がよろしいですな〜」





その言葉に、 もエドも微笑んだ。


も嬉しそうにニッコリ笑った後、元気よく口を開く。




「おじいちゃん、また明日も遊びに来るね!」





その の言葉に、おじいさんは優しく の頭を撫でた。















「早く帰って夕飯作らないとね〜」


は帰り道、赤く色づく空を見上げながら口を開いた。




、今日の夕飯はシチューだってよ」



エドはニッと笑うと、ちょこちょこ歩く の顔を覗きこんで言った。


はエドの言葉を聞いた途端、パァッと笑顔になってはしゃぎ始める。




「ほんと?!パパそれ本当?ねぇママ、今日の夜シチュー?」



の洋服の裾を引っ張って、飛び跳ねながら尋ねた。



はそんな の様子に微笑んで頷く。






「そうよ〜。今日は とパパが大好きなシチューを作るからねー」



の言葉に、 が目をキラキラさせて喜んだのは言うまでもない。


嬉しそうに とエドの手に自分の手を絡めて、軽く振りながら家への道を急ぐ。


そんな の様子を見ていると、本当に自然と笑みが浮かんでくる。






この村に来てから、もう数年が経った。


老人しかしないこの村でエドと は、治療を中心に働いていた。


暇なときなど、今日のように壊れた柵や小屋などを修理したりもしている。










けして裕福な暮らしではないけれど、 も生まれて暖かな家庭を築けていけていると思う。



あの時城から出ていなければありえない温かさに包まれた毎日。


村の人々も親切で、笑顔が絶えない日常。


私は自由になれたんだと実感できる瞬間。








これからもずっとこんな日々が続けと切に願っている・・・・

















家まであと少しという所で、急にエドが足を止めた。



「エド、どうしたの?」





エドは、訝しげな表情をして前方を睨むように見たまま動かない。


もエドの視線の先に目を向けたが、薄暗くなってきていて良く見えない。


諦めてもう一度エドに問いかけようと、 が口を開こうとした瞬間・・・





「人だっ!」




突然の叫びに、 は思わずビクッと反応する。


だが、エドはそんな娘の様子にも構わず視線の先へと駆け出す。


は少し泣き出しそうになっている を抱き上げて、優しげな口調で囁く。



「大丈夫よ〜。いい子だから泣かないでね」




コクンッと首を縦に振る の頭を軽く撫でてから、 もエドの後を追いながらもう一度目を凝らして前方を見つめる。





「あっ・・・」


近づいてきてようやく分かった。


確かに草むらに黒っぽい服を着た男性が倒れている。





まだ若い・・・


この村の人間じゃないみたいだ・・・





「おいっ!大丈夫か?」



先に男性のもとにたどり着いたエドは、素早く様子を見ながら呼びかける。


数年も治療などしていると、手際もよくなってくる。



「うぅ・・・」



エドの呼びかけに、男性は小さく呻いた。


だがすぐにまた意識を手放してしまったようだ。






「エド、その人大丈夫なの?」


が不安そうな声で尋ねる。



男性の様子を見ていたエドは顔を上げると、 の方を振り返って答える。







「あぁ。たぶん過労と軽い貧血だ。

足首を捻挫してる以外これと言って外傷もないし大丈夫だろーが、いちおう家に運ぶぞ」



エドはそう言うと、男性の腕を肩に回し立ち上がった。




も、 を地面に降ろしてもう片方の腕を支える。












薄闇の中、冷たい風が吹き抜けていった・・・




















後書きという名の言い訳・・・

私的に、 は書いてて楽しかったです!
元々保育士になりたかった私にとって、小さい子供を書くのはウキウキです♪
まぁ、可愛く書けているかと問われると、何も言えませんけど・・・


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