タイトル『遅すぎた出会い 第12話』
















ロイスと名乗った青年は、国へ帰る途中だった。


急ぎの用があるらしく、次の日にはロイスは国に戻ると言った。


は遊ぶと言って少々渋ったが、が一緒に買い物に行こうと言ったら納得してくれた。




「本当に助かりました。ありがとうございます」



ロイスはそう言うと、まだ名残惜しそうな顔をしている の頭を優しく撫でて村を出て行った。












「エド・・・・」



ロイスを見送った後、 は不安そうにエドの腕に手を伸ばした。


頼りないその の手に自分の手を重ねて、エドは無言で頷いた。





この偶然の出会いが、自分達の生活を変える・・・


そうは思いたくなかった。




この幸せな今を・・・


失いたくないと心から思った。







しかし運命とはいつも残酷なもの


それも二人は痛いほど分かっていた


















「遅くなり申し訳ございませんでした。」



ロイスの声が部屋に響く。


出る時と同じだ・・・


この部屋はやけに静かなんだ。


なのに部屋には人が十数人もいる。


そして皆同じように神妙な顔をしていた。





だがロイスの声を聞くなり、皆微かに表情が和らいだ。


そして数人の人間がロイスを迎えるべく立ち上がる。





「よく戻った!で、薬草はあったのか?!」



ロイスの目の前、この城に仕える医者が少々焦ったような勢いで訪ねてきた。


ロイスは微かに頷いて、皮袋を取り出した。


医者はそれを半ばひったくるような勢いで受け取った後、すぐに数名の者に指示を出して部屋を出て行ってしまった。






そのやり取りを見ていた者たちは一同に安堵の息をついた。


しかしすぐに数名の者は、また深刻そうな顔をして口を開く。




「だが、あの薬草で国王が完全に治られる保証はどこにもないのだろう?」


「しかし今はあの薬草以外に手がないのも事実。この国には腕のいい医者がそれこそ数えるほどしかいないであろう?

 その医者全員に見せてダメだったのだ。もう手はこれしかないだろう。」


「他の国からもっと腕のいい医者を呼び寄せる事はできないのですか?」


「馬鹿者!そんな事してみろ?!万が一敵対国にバレてしまったら、この国は一気に攻め入られるぞ!!!」


「落ち着け!今は薬草の効き目を信じて待つしかないであろう。」


「・・・申し訳ございません」



「・・・あぁロイス、よく役目を果たしてくれた。部屋でゆっくり休むと良い」





自分の名前が突然出てきて少々目を見開いたが、ロイスは静かに敬礼すると足早に部屋を後にした。















この国の国王は数ヶ月前から大病に侵されていた。


お世辞にも知識が豊富とは言い難いこの国の医者達が何人集まった所で、国王の容態は一向に良くならなかった。


それどころか悪化していく一方だ。


城の者皆が頭を抱えて対策に困っていた時、一人の医者が昔他の国で買ったという薬草の本を取り出してきた。


その中の一つ、確証はなかったが似たような病気を治したという事例があったので、ロイスがその薬草を取りに行く事を命じられたのだ。






(跡取りさえいればここまで状況も深刻化しなかっただろうに・・・)




ロイスは部屋につくなりベッドへと腰掛けた。


自分がこの国に仕え始めたのは数年前だが、そのまさに一年ほど前にこの国の姫が姿を消したという。



自ら出て行ったのか、それとも何者かに連れ去られたのかは分からない。


国中では連れ去られたという事になっているが、城の中ではその情報も曖昧だ。


皆揃えて姫の事になると口を噤む。





(いったいこの国はどうなっているんだ・・・)





ロイスは軽くタメ息を付くと、ベッドへと勢いよく横たわった。


数秒布団の心地よさに身を委ねていたが、ある事を思い出してハッと飛び起きた。





(なんて事だ・・・もう治ってやがる・・・)



あれほど痛んでいた傷が、今ではすっかり良くなっていた。


小さな村の、それこそ診療所に治まっているなんて勿体無いほどの腕の良さではないか・・・


ロイスは数秒目を見開き、傷があった場所を見つめた。






(彼ならもしかすると・・・)











その次の日だった。


薬草も国王の病気を治すどころか、和らげることもできないと分かったのは・・・


医者を初め、皆もう打つ手がないと嘆いた。


しかしそんな中、ロイスだけは一つの希望を見出していた。


そして皆の集まっていた部屋に向かって口を開く。






「腕のいい医者を知っております。」




「それは本当かロイス?!」


「はい。彼なら国王のご病気も治す事ができるかもしれません」


「いっいや、しかしそなたが申しておるのは他の国の医者の事であろう?万が一噂が広まったら・・・」


「その心配はないと思われます。その医者が住んでいるのは小さな村ですから」


「小さな村?!その医者の腕、信用できるのか?」


「はい。実際に私が今回の旅で治療を受けております。私からの目ではありますが、腕は確かでございます。
 
 ・・・・・少なくとも私が知る中で一番の腕前かと・・・」





ロイスの言葉に、皆一様に考えを巡らせた。


だが、返ってくる答えなど一つしかありはしないのだ・・・・


















ロイスが出て行ってからちょうど3週間。


その青年はまた診療所へとやって来ていた。


村から城までの距離を考えると、車をとばして来たのだろう。




「あなた方のその腕を見込んで頼みがあります。城に来て国王の治療をしてもらいたい。」






それは有無を言わせない表情だった気がする。


でも私の気のせいだったのかもね


幸せが壊れる音がして、思わずそう思っちゃったのかもしれない・・・











ねぇ、エド


どんなに一生懸命作り上げてきた物でも


いつかは必ず壊れてしまうんだよ




でも人間はそれを分かっていながらも


必死になって守ろうとする


ううん、分かっているからこそ守るのかもね






だって一秒でも、それこそ一瞬でも守りたいものって


誰だってきっと持ってるものね












ねぇ、エド


私たちにとっての守りたい物って、やっぱり今の状況だよね


エドがいて がいて、私がいて


家族が揃って普通に生活する


そんな当たり前の事を必死に守ってる


ううん、当たり前の事なんてきっとどこにもないんだよね













ねぇ、エド


私は思うの




いつかは壊れてしまうかもしれない


でもきっと、私はこの道を選んだ事を後悔なんてしない


エドに会えて、 を生んだ事


この先何があろうともきっと後悔なんてしないよ









それにね


壊れない物だってあると思うんだ




私がエドや を愛する気持ち





この気持ちだけは誰にだって壊せない












ねぇ、エド


私、本当にあなたの事を愛してるよ・・・


例えこの先どんな結末が私たちを待ち受けていても






その気持ちだけは決して変わらないよ



















後書きという名の言い訳・・・

うーわー・・・
スッゴク中途半端なところで終わっちゃった?!
ごめんね、唯ちゃん!!!
でも、唯ちゃんなら繋げてくれると信じてるよ!(おいっ!)

・・・いや、本当にすみません。
精進します・・・・



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