タイトル『遅すぎた出会い 第13話』
数年前、目にしたこの城。
今ではあの頃のような華やかな雰囲気は無く、ただ手入れされた木々が城を被っている。
エドは、あのまま強引に車に乗せられ城に連れて来られた。
とを、あの村に残して・・・
「こちらです!・・・皆の者、道を開けろ!!」
数人の兵士が道を先導する。走らなくてもいいはずが、エドは走らされていた。
(こんなに急いでるってことは・・・そんなに悪いのか? の父親は・・・)
ここでエドは はっとした。
これから自分が診ようとしているのは、国王・・・の父親なのだ。
こんなかたちで再会する事になるとは・・・
できれば、あの日を最後に 死ぬまで顔を合わせる事はしたくなかった
しかし、既に定めに背いた2人。どんな運命を辿ろうと、決して後悔することはない。
(残酷な結末だな・・・愛してるぜ、・・・)
エドは、歩みを止めた兵士たちの真ん中で瞳を閉じた。
ギィッ
鈍い音をたてて、目の前の大きな扉が開かれる。
王は、部屋の中央あるにベッドに横たわっていた。その周りに数十人の人がいる。多分、医者だろう。
お願いします とロイスに促され、エドは王の側へ歩み寄った。
数年ぶりに目にする王に、かつてのような威厳は存在しなかった。顔は青ざめ、痩せ細っている。
すぐに病の重さに気付いたエドは、周りにいる数人に的確に指示を出す。
「 自分に出来る事は、全て施そう 」 そう心に決めて
数時間後、今まで昏睡状態だった王がうっすらと目を開けた。辺りに、歓声と驚きの声があがる。
「国王様、大丈夫でございますか!?・・・この者が、国王様の治療を致しました。」
ベッドを挟んで向こう側、エドの反対側にいた男が王に告げた。
王は、ゆっくりと視線をエドに移す。 エドは王に一礼をした。
「・・・お、まえの・・・名前は・・・」
弱々しい声で、王はエドに問いかけた。 エドは少し躊躇ったが、口を開く。
「・・・エドワードと申します。」
その返事を聞くと、王は「 これからも頼む 」と微笑み、眠りに落ちた。
「やったぞ!国王様の意識が戻られた!!」
「彼は何者だ!?どのような勉強をしたら、あのような技術が取得できるのだ!」
王が眠りについた後、辺りには喜びと騒然とした空気が入り乱れた。
そんな中、1人の男がエドに向けて言葉を発した。
「・・・エドワード、エドか!?」
ロイスと話をしていたエドは、愛称で呼ばれた事に驚き、急いで視線を男に移した。
辺りのざわめきは、無くならない。
「覚えてないか?お前が軍にいた時、お前は俺の部下だった。」
まだ、三十代半ばほどだろう。体に逞しさを残した男は、エドに向かって笑ってみせた。
「あ・・・。お、お久しぶりです!」
エドは軽めに敬礼をする。彼は、自分がセントラルに勤務する前に努めていた部署の上司。
「今は、医者だろ。にしても、いきなりお前が『止める』なんて言いだしたからセントラルの連中は困ったらしいぞ?
ちょうど、姫の捜索で人手を欲しがってたんだからな。勿体無いなー、お前は出世すると言っただろう?」
この会話に、耳を澄ませる老人が・・・
しかし、周りもエドも気付かずに話は進む。
「すいません。少し、自分を見つめ直そうと思って。・・・医者と呼べる程では無いんですが。」
久しぶりの顔馴染みに、エドは警戒心を緩めていた。
王の周りにいた人々が各自の部屋へ戻っていく中、エドは上司と別室に移った。
ロイスは自分の部屋でくつろいでいた。そして、自分の目に狂いは無い事に喜ぶ。
(やっぱりエドワードさんは凄い。このまま行けば、国王様の病気は完治されるかもしれない・・・!)
ちょうどその時、部屋をノックする音が聞こえた。
「はい。」 と返事をすると、扉が開く。次の瞬間、ロイスは自分の目を疑った。
「・・・ラナード様!?どうしてこのような所にっ!」
ラナード・・・彼は、昔から王に使えていて側近の中ではまあまあな地位にいる。
目的のためなら手段を選ばないとしても有名で、先ほどエドたちの会話に耳を澄ませていた男でもある。
「少し、お前に聞きたい事があってな。・・・あぁ、そのままでよい。」
ラナードはロイスに近づき、跪こうとするロイスを止めた。
「先ほどの医者の事だが・・・」
何の疑いも無く問いかけに答えるロイスをよそに、ラナードはいやらしい笑みを浮かべる。
コンコンッ
ドアをノックする音がする。
「はぁーい!」
パタパタとは玄関へ向かった。
「あら、おじいちゃん。どうされたんですか?」
そこには、エドに柵を直してもらった老人がいた。
「いやぁ、ちゃんにお土産じゃよ。・・・エド先生はまだ帰って来んのかい?」
「えぇ、長引いているみたいですね。連絡も無いので、帰ってくるのはいつになるか・・・」
すみません と、の好きな果物が入った袋を受け取りながらは答えた。
エドが村を留守にしてからというもの、代わる代わるこの村の人々がたちを気遣いに来てくれている。
「おじいちゃん?わぁ〜、のすきなフルーツだぁ!ありがとう!!」
玄関まで来たはから袋を受け取り、嬉しそうに声を上げた。
そんなの微笑ましい様子を見ていると、家からすぐの道に一台の車が止まった。
「あら? エド、帰ってきたみたいですよ。ちょっと行って来ますね。」
老人に断り、は小走りで車に近づいた。
「エド!おかえりなさ・・・」
しかし、車から出てきた人物を見てはその場に立ち尽くす。
「お久しぶりでございます、様・・・」
そこにはに頭を下げながらも、気味の悪い笑いを浮かべる ラナードの姿があった。
後書き
登場人物が多くて申し訳ないです・・・(>_<)
悪役(ラナード)登場で、物語が進んでいくといいな。なんて思ってみたり・・・
サプリちゃんにお任せ(逃)
では、読んで下さって有難うございました。
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