タイトル『シュウカイドウ 中編』




















「これなの!」



は、バルコニーの端に置いてある鉢植えを手に収める。



「何ていう花なんだ?」



エドは目の前に見せられた花を見て聞いた。



「オダマキっていうのよ。可愛いでしょ?」



はエドの顔を覗き込む。



「!?」



その仕草に、エドの鼓動は早くなった。



見上げるのは反則だろう・・・ 



早まる鼓動を抑えられず、エドは顔を赤くさせながら問う。



「こっこの花の花言葉は何なんだっ?」



するとは、待ってましたとばかりに嬉しそうな顔をする。



「あのねっ・・・」



しかしふと我に返ったのか、少し寂しそうな顔をした。



エドがその理由を聞こうとしたが、その前にがまた口を開く。



「・・・『かならず手に入れる』っていうの。」



エドは、はっとした表情でを見る。



「でもね・・・他にも、『無事に帰って来れます様に』とか思いながら育ててみたの。エドとアルは、いつも危険と隣り合わせでしょ?」



は、寂しそうな笑顔をエドに向ける。



エドはを抱き締めたい衝動に駆られた。



しかし、グッと堪え笑顔を創る。



「・・・サンキューな」






この気持ちは、自分だけの一方通行だと思っていたから・・・






「この鉢植え、持って行ってもいいか?」



エドはに聞いた。



「えっ?・・・別に大丈夫だけど、邪魔にならない??」



は驚いて、少し声が大きくなる。



エドは、特に気にする様子も無く続けた。



「せっかく、俺達のために育ててくれたんだろ?持って行った方が、の思いが伝わりそうだ!」



は顔を真っ赤にした。



エドが笑顔でそんな事を言うから・・・



自分の気持ちがバレてしまったのではないかと錯覚を起こしてしまう。



は俯き加減に、こう提案した。



「・・・鉢植えだと荷物が増えちゃうから、押し花にするのはどう?3日もあれば、間に合うかも。」



この提案に、エドは笑顔で答えた。



「そうか!それもいいなっ。じゃあ、頼んでいいか?」



は快く頷く。



「うん、今日からもう作るね。エドは機械鎧の装着頑張って!」



おう!とエドは返事を返した。



一通り会話が終わり、エドは自分の部屋に帰る。そして、「ふう。」とため息をついた。







どうして、素直になれねぇんだ・・・







への気持ちは、ずっと前から変わってなどいない。



しかし、素直になれずにいる。



そんな自分がたまらなく悔しい。



一時期、自分の気持ちは封じ込めたと思っていた。



だが今日の会話ではっきりと、自分はが好きだと気付かされてしまった。



「ちくしょ・・・。どうしたらいいんだよ。」



こんなもどかしい想いもうたくさんだ・・・



エドは頭を抱え、ベッドに横たわる。



そして、ここにも置いてある鉢植えが目に止まった。



「・・・そうか!」



エドは秘策を思いついた。今の自分とに相応しい、とっておきの・・・






















エドとアルがリゼンブールを去る日は、あっという間に訪れた。



エドは新しい機械鎧の感触を確かめ、は押し花をしおりにする作業をしていた。



「兄さん、そろそろ準備できた?もう行かないと、列車に乗り遅れるよ。」



「おー、わかった。今行くからもう少し待っててくれ。」



部屋にひょこりと顔を出したアルは、兄の返事に素直に頷き扉を閉めた。



「・・・よしっ、そろそろ行くか。」



エドは、メモ用紙に何かを書いた。



そして、それを大事そうに本の間に挟むと荷物を持って部屋を出た。







いつものように、ウィンリィの家の前で別れのあいさつをする。



「たまには連絡入れるんだぞ?」



「わーかってるって!心配すんなよ、ピナコばっちゃん!!」



エドは軽快にあいさつをしていく。



その時、家の中からが姿を現した。



そして、エドとアルにしおりを差し出す。



「・・・はい!エドとアルにプレゼント。また会える日を楽しみにしてるね!」



の笑顔は、どこか寂しそうだった。



「わぁ!ありがとう、!!大切にするね。」



アルの挨拶を合図に、2人はしおりを受け取った。



「・・・じゃあ、またな。」



2人は、駅へ続く道を歩き出した。









次に会える日はいつなのだろうか



は、2人の背中を見つめながらそんな事を思った。



「ふ〜〜!修理も終わったし、ゆっくりしようっと。、また花言葉教えてくれる?」



2人の姿が見えなくなると、ウィンリィはに呼びかけた。



「・・・うん、いいわよ!じゃあ、エドが使っていた部屋に本があるから取ってくるわね。」



少し寂しそうにしていたも、ウィンリィの問いかけに合わせ表情を変えた。



カチャッ



部屋のドアを開ける。



主を失った部屋は、ひっそりと静まり返っていた。



「この本棚だったよね・・・?」



は花言葉の本を探す。



「あった、あった。」



茶色い皮製の表紙に金色の刺繍文字。



目当ての本を見つけるとパラパラとページをめくった。



カサッ



1枚の紙切れが、本の間から落ちる。



「・・・あれ?私、メモ用紙なんて挟んだっけ?」



不思議に思いながらも、はメモ用紙を拾い中身を見た。




「・・・エド・・・」




中身を見ると、はメモ用紙を愛しそうに抱き締めた。



はっきりとした理解は出来ないものの、なんとなく伝わった気がする。



ーー?お茶入ったよー!」



リビングの方からウィンリィの声が届く。



「はぁーいっ!」



はメモ用紙をポケットにしまい、立ち上がった。



そして



「・・・好きよ、エド。」



頬を赤らめてそっと呟くと、静かに扉を閉め部屋を後にした。


















   今は無理だけど、次に帰ってきたときに見て欲しいものがあるんだ。



   次の秋にまた帰って来る。



   だから、その時までに色んな花言葉を見ててくれ。



   きっと俺は、口に出来ないから・・・



 
                     エドワード』














後書き・・・


あ、甘甘になっていたでしょうか・・・?

自分的には言葉の前に、告白っぽいものを仄めかすのが好きですv

甘いのかとは別な話ですが(^^ゞ

あと1話で終わらせられる様に頑張ります!

次こそ、リクの甘甘を目指します・・・!

では、読んで下さって有難う御座います。








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