タイトル『私だけの特効薬』
















『 あれ?おかしいな。今朝は頭痛なんて無かったのに・・・ 』



自分の後ろに数名の部下を引き連れて、ロイは挨拶を始めた。



「おはよう、諸君。今は季節の変わり目だ、風邪には十分 気をつけたまえ。・・・以上!」



部屋にいた全ての人間が敬礼を返す。



『 なんだか、頭がフラフラする・・・力が入らな 』



ガターンッ!!



異様な音に、周りにいた者も 帰ろうと踵を返していたロイも振り返った。



「・・・??!!」



真っ先に駆け寄り を抱き起こしたのは、他でも無いロイだった。



『 幻覚?大佐の声が・・・聞こえる 』



抱き起こされた腕の中で、は遠のく恋人の声を聞いた。










「まったく、言った傍から倒れるのは勘弁してくれ。身が持たないでは無いか・・・」



「・・・すいません。」



ロイの呆れた様な口調に、は申し訳無さそうに言葉を並べた。



「まあ、無理はしないことだ。今日はゆっくり休みたまえ。」



そう言って、ロイはの体をベッドに沈める。



ここは司令部内の仮眠室。



医務室ではすぐに会いに行けないから、というロイの判断なのだろう。



朝の朝礼で倒れたは、有無を言わさずここに運ばれていた。



「・・・はい。」



この返事を聞き、ロイは満足そうに笑い部屋を出て行こうとする。



しかし、何か言いたそうなの表情に気づき足を止めた。



「どうした? 何か欲しいものがあるなら、言ってみなさい。」



小さな子供をあやすような口調で、ロイはの頭を撫でる。



「あの・・・ありがとう。」



ロイは思わず苦笑した。そして、健気な恋人を愛しく思う。



自分が辛いときまで他人に感謝をするのか



そして今度、はぺこりと頭を下げた。



「私がいないこと、他の人に知れないよう ここに運んでくれたんですよね。助かります。」



は、自分がどんな場所で倒れたのか 覚えていないのだろう。



勘違いをあえて直さず、ロイはその言葉を心の中に終い込む。



「君は・・本当に可愛らしい・・・」



小声でそう呟くと、の隣に椅子を運び 満足そうにを見つめた。



この対応に、驚いたのはである。



「大佐?・・・戻らなくていいんですか??!!」



この問いに、ロイは笑顔で返事を返した。



「君は目を掛けていないと、何をし始めるかわからないからね。それに、今はロイと呼んでくれ。敬語も要らない。」



は ぷうっと頬を膨らませ、しかし嬉しそうにこう答えた。



「えへへ、ロイがいてくれるなら安心だよ。ちゃんと寝てるから大丈夫。」



「ーーーーっ」



ロイの顔に赤みが差す。



少し顔色の良くなったの表情に、いつものような笑みが漏れたのだ。



「も、もう少ししたら私は仕事に戻る・・・!」



ロイは顔を逸らせて、ぶっきらぼうに答えた。



『 戻らないくせに。・・・ちゃんと傍にいてくれること、わかってるよ? 』



平然にと振舞うロイを見つめながら、その優しさに深く感謝する。





貴方とこうしていられることが 何より嬉しい



傍にいてくれるだけで こんなにも暖かい



貴方に出会えて 本当によかった





「ほら、ちゃんと掛けて。」



ロイは微かにずれた、の毛布を直す。



「ロイ・・・」



の呼びかけに、ロイは優しい笑顔で返事を返す。



「どうした?」







「あのね、大好き・・・」







「な・・・!」



コンコンッ



ロイが真っ赤になり慌てだした時、ドアがノックされた。



「大佐。さんを心配されるお気持ちは分かりますが、そろそろお戻り下さい。残業になりますので。」



「あぁ、わかった。もうすぐ戻るよ。」



では とノックした人物の足音は徐々に遠ざかって行った。



「すまないね、もう迎えが来てしまったよ。」



遠ざかるころには、ロイの表情はいつも通りに戻っていた。



苦笑しながら、名残惜しそうに椅子を立つ。



先ほどの返事を聞けないは、不安になり踵を返すロイをただ見つめる。



「そうだ、君に早く治るいい方法を教えてあげよう。」



こちらを向いたロイは、なぜか笑みを浮かべている。



「薬を用意するから、目を瞑ってみなさい。」



そう言われ、は素直に瞳を閉じた。



微かに、こちらに近づく足音が聞こえる。



その時だ。



ふわりと、何かがの唇を覆った。



「んっ・・・」



初めは優しく しかし次第に甘く激しく



息をする間も忘れ、二人は篤く触れ合った。



「はぁっ」



開放されたのは、それから数分後。



ロイは、渋々から離れていく。



そして 赤く染め上がったの表情を満足そうに眺めると、



「あとは、しっかり眠るだけだな。」



こう言って、頬にキスを落とした。



「行ってくるよ。」



「・・・いって・・らっしゃい」



間々ならない息遣いを整えて、は懸命に言葉を発した。









この数日後、ロイが体調を崩したのは言うまでも無い。














あとがき。


遅れて申し訳ありませんっ(>_<)

5000ヒット記念リク、「ヒロインの看病(?)をする大佐」です。

なんか・・ロイっぽくないような・・・初のロイ夢なので広い心でお願いします(滝汗)

それと、「ずっと・・・」をやめてこちらをUPしたことの理解をお願い致します。

「ずっと・・・」は、書いていて内容が面白くないような感じがしてしまったんです。

これが面白いかと言われたら、肯定は出来ませんが(^^ゞ

でも、こちらの方が自分的に納得のいく作品になったので・・・

やっぱり、せっかく公開するのなら納得のいくものを公開したくて。

機会があったら、「ずっと・・・」の続きが書けたらいいなと思います!

では、ここまで読んで下さって有難う御座いました。

感想などなど、お待ちしております(*^^)v




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