タイトル『遅すぎた出会い 第11話』

















「よしっ、これでひとまず安心だな。」



エドは怪我をしていた男性を家まで運び、手当てをすると自分のベッドに寝かせた。



部屋の電気を消すと、の待つリビングへと向かう。






「あっ、どう?あの人の具合は・・・」



は部屋から出てきたエドに尋ねた。



「・・・あぁ。思ったより酷い怪我だった。少し様子を見た方がいいみたいだな。」



「そう。じゃあ、目が覚めるまでここに居てもらいましょう?覚めたら診療所のベッドに移って貰って・・・」



そうだな、とエドが返事すると同時に、が目を輝かせながら聞いてくる。



「目がさめたら、お兄ちゃんとあそべるのっ!?」



その問いに、は微笑んで答えた。



「体の調子が悪かったらダメよ?・・・でも、遊べるといいわね。」



そしてまだ眠そうに無いを抱き上げ、寝室の扉を開けた。










「やっと寝たのか。今日は、随分苦戦したんじゃねぇか?」



を寝かしつけてリビングに戻ると、エドは苦笑しながらを迎えた。



「本当に大変だったわ・・・。あの男の人と遊べるの?って繰り返し聞いてくるんだもの。」



「ごめんな、頼んじまって。」



エドは少し申し訳無さそうに、にホットミルクを差し出した。



「・・・にしても、はアルと遊ぶだけじゃ満足しねぇのか?」



普段のは、エドの仕事に付いて行ったりと遊んだりしている。



村の子供の数は少なく、遊ぶ相手も限られた。



そんなにとって、アルは数少ない遊び相手なのだ。







はホットミルクを受け取り、エドの独り言に答えを出す。



「仕方ないわよ。はエドみたいに活発な子なのよ?ここは遊び相手も少ないし。・・・それにおじいちゃん達じゃ、追いかけっこ出来ないんですって。」



「そうか・・・俺もなかなか相手してやれねぇからなぁ。」



「エドは忙しいんだもの、しょうがないわ。私も時間作るように努力するから大丈夫よ?」



「それに、アルだっての事を自分の子供みたいに扱ってくれるし。助かってるわ。」



「そうだな。アルにも感謝してる。」



アルは鎧のままだが、あの優しい人柄と親切な性格で村人たちに好かれていた。



今では村の娘と結婚し、子供はいないが幸せな生活を送っている。



「もちろん、お前にも感謝してるぞ?」



エドはニカッと笑い、言葉を付け足した。



その笑顔に、は思わず頬を紅くする。そして、それを隠すように、少し大きな声で言った。










「たまにはとお料理しようかしら。そしたら、エドも嬉しいわよね?」



振り向きざまの笑顔に不意をつかれ、今度はエドが紅くなる。



そして、また前を向いてしまったを後ろから抱き締めた。



「えっ、エド!?どう・・・」



慌てたの言葉を遮るように、エドは耳元で呟いた。



「・・・俺って幸せ者だよな。こんなに愛しい奥さんと可愛い娘に囲まれて。」



「どっどうしたの、エド?急に・・・」



「いや。あの時、お前を連れ出して無かったらって考えちまってさ・・・。結局追っ手も来てないし、この村にも馴染めた。」



「等価交換なんて、今は無い方がいいと思ってる。この幸せな日々となんて考えられねぇ・・・」



「等価交換ならもう済んでるじゃない。」



「え・・・?」



突然の言葉に、エドは目を見開いた。



はエドの腕を解き、向かい合わせになる。そしてエドの眼を見て言った。



「私の16年間の人生。あの仮面的な日々がその代償だって私は信じてる。」



「私も幸せよ?あの時エドが跳べって言ってくれなかったら、今の私はここにいないもの。・・・ありがとう、エド。」



柔らかな微笑みと、声。エドは思わずを抱き締めた。



それから頬に手を添え、口付ける。



、愛してる。」



耳元で囁きながら。






「・・・久しぶりね。」



暫くの口付けの後、頬を赤らめたが言った。



「そうか・・・。最近はが賑やかだからな。」



くすくすと笑いながら、はエドの頬をなぞる。



はあなたに似て、元気な子だから。」



ふと、エドは思いついたように言った。



「今日、お前んとこで寝るからな。」



「えっ!?」



「しょーがねぇだろ?俺のベッド使ってんだから。」



慌てるの様子を、エドは企みを含んだ笑みで見ていた。



ころころと表情を変えていただが、ようやく落ち着き言葉を返す。



「・・・たまにはいいかもね。」



その言葉を聞くと、エドはの肩を抱いてリビングを後にした。













この幸せが永遠のものとなりますように   













冷たい風など、吹き飛んでしまえ・・・


















数日後の朝―――



「・・・ん」



カーテンが開く音と共に、女性の声がした。



「よかった、目が覚めたんですね。」



心地よい声が男の耳に届く。



「・・・ここは?」



ぐるっと辺りを見まわし尋ねた。



「私の家です。診療所みたいなものをやってるんですよ。草むらであなたが倒れていたので主人がここに運んだんです。」



「そうですか・・・ご迷惑お掛けして申し訳ありません。私はこれで・・・っと」



男はベッドから起き上がり立とうとしたが、足元がふらついてしまった。



は急いで男の側へ寄り、支えた。



「大丈夫ですか!?怪我、酷いみたいですよ?もう少し休んで行って下さい。」



「しかし、私は使いの身でして・・・」



使いという言葉には少し動揺したが、そんな素振りを見せず答える。



「そうですか。じゃあ、少しだけ待っていて下さい。主人を呼んできますから・・・」



は大きくなる不安を隠しながら、エドに意識が戻った事を伝えに走った。












「どうしても急ぐのか?また倒れたりしたら大変だぞ。・・・もう少し、ここにいるといい。」



「・・・そうですね。では、もう少し休ませて下さい。」



「そうか、よかった。じゃあ、そこに居てくれ。」



一通りの会話を終え、エドは部屋を出ていく。





ガチャッ





エドがリビングへの扉を開ける。



は不安そうな、は遊べるのかという期待の眼でエドを迎えた。



「エド・・・あの人はどうするって?」



「休んでいくってさ。・・・それより、あいつ国の使いかもしれねぇぞ。」



エドは声のトーンを下げて言った。



「やっぱり・・・どうしたらいいの。」



は、明らかに不安そうな顔をする。



「とりあえず、普通にしてろ。過去の事は絶対に話すなよ・・・」



「わかったわ・・・」



ここにきて、こんな事になるなんて・・・



はこれまで感謝してきた神を呪いたくなった。



この幸せな日々が終わる事なんて考えたくない・・・



エドはその不安を察し、怯えた瞳のを抱き寄せた。



明るい顔をしていたも、異様な空気を感じたのかエドの足に抱きついた。



「・・・大丈夫だ。俺がついてるだろ?」










3人は落ち着きを取り戻し、男のいる部屋に向かった。



「すまねぇ、待たせた。とりあえず家族を紹介しようと思ってな。」



エドは明るく、あの笑顔を見せながら男に接する。も負けじと笑顔を作った。



「俺は、エドワード。こっちは妻のと、娘のだ。これからは診療所のベッドに移って貰いたいんだが、食事はここで摂るといい。」



一通りの説明を聞き終え、男は一礼する。



「すみません、お世話になります。私は・・・」













『国の使いの者で、ロイス・ラナックと申します。』



そう告げた。















言い訳の言葉

夜の描写が無駄に長いですね(汗)どうしても、エドとヒロインちゃんのラブラブが書きたくて・・・プロットは(また)授業中にやったので、書いていて笑いを堪えるのが大変でした(>_<)
2人がリビングを後にしてからは、さんのご想像にお任せしますv
このお話は、何故かヒロインちゃんに「主人」と言わせたくて。結果的に呼ばせられたので、自分的には少し満足がいきましたv皆さんはいかがだったでしょうか・・・??

長いのに読んでくださり有難う御座います。そして言い訳まで読んで下さって有難う御座いました!

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